幼児教室に通うことによって得られる成果について疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
幼児教室コペルと東北大学が産学共同研究を行い、通室している子どもたちと対照群を比較調査しました。
結果として、「全検査IQ」や「QOL総得点」などの項目で有意に高い値が報告されています。
この記事では、幼児教室を検討しているお父さんお母さん向けに、解析結果報告書の感想を共有します。
幼児教室の成果についての日本人対象の調査は少ないので貴重
最近の日本人対象の調査結果は貴重なデータです。
こういうデータを蓄積していくことは意義深いと思います。
ヘックマン教授による有名な研究とは、子どもたちの背景が異なる
ジェームス・ヘックマン教授によって発表された2つの調査は、幼児教育のエビデンスとして広く知られています。
ヘックマン教授が発表した幼児教育に関連した有名な2つの調査
- ペリー就学前プロジェクト(組入期間:1962年〜1967年)
- アゼペリアンプロジェクト(組入期間:1972年〜1977年)
「幼児教育の意義」について説明する際に、知育の現場でよく参照される調査です。
しかし、そのプロジェクトの結果を「幼児教室」に直接適用するのは難しいと感じています。
プログラムの総時間や幼児たちの背景が大きく異なるためです。
「教育者」が「毎日」プログラムを実施した
ヘックマンの研究プログラムではトレーニングを受けた教育者が、毎日2時間から8時間の授業を行っています。
量に関しては幼稚園に近いです。
日本の幼児教室は週1回50分のレッスンが一般的な時間だと考えられますので比較することは難しいです。
対象はアフリカ系アメリカ人
この追跡調査は、経済的に余裕のないアフリカ系アメリカ人を対象にしています。
社会的な背景からアフリカ系アメリカ人が豊かさを得ることが困難だった時代の調査です。
日本で幼児教室を検討しているご家庭とは、異なる背景を持つ可能性が高いと考えられます。
対象者の組入期間は1960年代〜1970年代
約50〜60年前に始まった調査です。
その頃と比較して、教育の違いは多くの面で見られるでしょう。
現代の日本の教育システムは以下の点で異なります。
- 教育の均等化が進んでいる
- 文部科学省の目標には非認知能力への取り組みが含まれている
- デジタル技術とAIを活用した教育が導入されている
コペル&東北大共同調査の概要
調査の概要を記載します。
日本人の小学生低学年が対象とされた調査になります。
共同研究の目的
御社の教育が⼦どもの⾮認知能⼒・認知能⼒を育み,
well-beingの達成に寄与することの⼼理学的エビデンスを得ること.
2020年7⽉〜8⽉は⼩学校低学年児を対象として,
⽣徒様(コペル群)と対照群の認知能⼒や⾮認知能⼒を⽐較し,
御社の教育の効果検証を⾏った.
研究方法
参加者
参加者 | コペル群(N=41) | 対照群(N=27) |
平均年齢 | 7.34歳 | 7.51歳 |
性別 | 男子27名、女子14名 | 男子10名、女子17名 |
居住地 | 仙台14名、福岡27名 | 仙台19名、福岡8名 |
認知能力検査において「全検査IQ」「知覚推理」で有意差を示す
現代日本において、幼児教室に通う幼児がどのような成果を示すかを検討することは、非常に重要だと考えられます。
全検査IQスコアが短期的に向上することは納得感があります。
未見の問題に挑戦するのと、事前に教室で学習してから取り組む場合では、問題の難易度が大きく異なると感じられるためです。
知覚推理検査とは
知覚推理力とは、視覚や聴覚などの感覚を用いて情報を収集し、それをもとに判断・推論する能力です。知覚推理力は、学習や問題解決、創造性などに影響を与えるとされています。
知覚推理検査は、この知覚推理力を測定するための検査であり、図形や音声などの刺激に対して反応する課題が含まれます。
幼児教室では図形や空間認識に関する問題によく触れる機会があるため、知覚推理のスコアの差が全体の差に影響を及ぼすと考えられます。
非認知能力検査では全4項目で統計的に有意な差が確認
すべての項目において、コペル群のスコアが有意に高いことが示されました。
特に自尊感情の項目で大きな有意差が生まれています。
この検査では、小学生版QOL尺度(親用)が使用されています。
「親が評価者」という点もポイントと感じました。
自尊感情とは
「自尊感情」とは、自分自身を尊重し、価値があると認識する感情のことを指します。
ただ、研究者によりその定義が異なる場合もあるようです。
幼児教育における自尊感情の形成は、子どもの成長と発展にとって非常に重要だと感じています。
自尊感情が豊かな子どもは、自分自身を信じて、困難な状況に直面したときでも積極的に対応して挑戦します。
幼児教育において自尊感情を育てるためには、以下のようなことが大切と言われています。
- 正しい自己認識の育成:子どもが自分自身の能力や特性を理解し、それを認めることが大切です。これにより、子どもは自分が自己価値を持つ存在であることを理解します。
- 認識と評価のバランス:子どもの能力や行動を適切に評価し、その評価を正確に伝えることが重要です。過大評価も過小評価も避けて、健全な発達を促進します。
- 信頼と安心感の提供:子どもが自分自身を自由に表現できる安全な環境を提供することが大切です。それによって子どもは、自分の感じ方や思考、行動が尊重されていると感じ、自尊感情を育てることができます。
- 達成感と自己効力感の育成:子どもが自分で目標を達成したり、困難を克服した経験を積むことで、自己の力を信じる感覚(自己効力感)が育ちます。これは自尊感情を高める重要な要素です。
幼児教室が提供しているプログラムは自尊感情を高めるものだと感じています。
小学生版QOL尺度(親用)とは
小学生版QOL尺度(親用)は、小学生の子供たちの生活の質(Quality of Life:QOL)を評価するための尺度であり、親が子供の健康や教育などの様々な側面に関する情報を提供することで、子供たちのQOLを把握することができます。
メリット | デメリット |
---|---|
子どものQOLを把握することができる 親子のコミュニケーションを促進することができる 学校や保健所などの専門家との連携が可能になる | 評価者によって評価結果が異なる可能性がある 評価項目が限定的である 親の主観的な評価が反映される可能性がある |
小学生版QOL尺度(親用)のメリット
小学生版QOL尺度(親用)のメリットは、以下のようなものがあります。
1.子どものQOLを把握することができる
小学生版QOL尺度(親用)を使用することで、子供のQOLについて客観的に評価することができます。
これにより、子供たちの健康や教育、生活環境などの改善点を見つけ、適切なサポートを行うことができます。
2.親子のコミュニケーションを促進することができる
小学生版QOL尺度(親用)は、親が子供たちの健康や生活環境などについて情報を提供することで構成されています。
このようなコミュニケーションは、親子の信頼関係を深め、良好な関係を築く手助けとなります。
3.学校や保健所などの専門家との連携が可能になる
小学生版QOL尺度(親用)を使用することで、子供たちの健康や教育などの情報を専門家と共有することができます。
これにより、子供たちにとって最適なサポートを提供することができます。
小学生版QOL尺度(親用)のデメリット
小学生版QOL尺度(親用)のデメリットは、以下のようなものがあります。
1.評価者によって評価結果が異なる可能性がある
小学生版QOL尺度(親用)は、親が子供たちの健康や生活環境について評価することに基づいています。
しかし、評価者によって評価結果が異なる可能性があります。
2.評価項目が限定的である
小学生版QOL尺度(親用)は、子供たちのQOLを評価するための尺度ですが、評価項目が限定的であることが欠点となります。
例えば、尺度に含まれる項目が十分にカバーできていない側面がある場合、子供たちのQOLを正確に評価することができなくなる可能性があります。
3.親の主観的な評価が反映される可能性がある
小学生版QOL尺度(親用)は、親が子供たちの健康や生活環境について評価することに基づいています。
そのため、親の主観的な評価が反映される可能性があり、客観的な評価とは異なる結果が出ることがあります。
とはいえ「幼児教育」において親が教育の専門的知識を持つことは重要
OECD(経済協力開発機構)は、「幼児教育」に関する調査を行っており、その中で親が教育の専門的知識を持っていることも重要であると指摘しています。
親が子供たちの健康や教育について専門的な知識を持つことで、子供たちのQOLを高めることができます。
「自尊感情」は親も通室しながら大事に見守ってきた項目だと思います。
幼児教室へ通っている親の教育へのモチベーションや知識は高いと感じています。
特に通室歴が長くなればなるほどそのような傾向が強くなります。
そういう親の関わりもこのスコアに表れているのではないかと感じました。
もっと知りたい情報
下記の点についてさらに掘り下げたいと感じました。
- コペル群の通室歴はどの程度なのか
- 対象群とはどのような人々(小学生本人、その親の教育歴など)を指しているのか
- 今後、この数値の差は継続する?縮小する?拡大する?
- 将来、この差が影響を与える要素(収入や幸福度など)はどのようなものか
まとめ
この記事の要点を以下にまとめます。
- 日本の幼児教室における成果が、調査によって明らかになりました。
- 認知能力に関しては、コペル群でいくつかの項目で高い成果が見られました。
- 非認知能力では、コペル群がすべての項目で有意に高い成果を示しました。
- 親のモチベーションや関与が、これらの成果に影響しているのではないかと感じました。
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